『Vertical SaaS Study #1 アンドパッド,FiNC,ミクシィの新人若手エンジニア成長戦略』での登壇レポート

Koji Kita
MIXI DEVELOPERS
Published in
May 24, 2022

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5/12(木)に開催された『Vertical SaaS Study #1 アンドパッド,FiNC,ミクシィの新人若手エンジニア成長戦略』でミクシィの新卒技術研修について紹介したので、そのレポート記事です。

イベントの概要

ミダスキャピタル様が主催のMIDAS TECH STUDYがVertical SaaS Studyに名前を改め、記念すべき初回イベントとして新卒研修を題材に、アンドパッド様、FiNC様とミクシィの3社がそれぞれお話しました。

アーカイブ動画はこちらです!

他の2名のお話も簡単に紹介します。

圧倒的成長をしながら急拡大してる開発組織が新卒採用やってみた

アンドパッドの下司さんより、2023年の新卒採用に初チャレンジしたお話でした。全社のエンジニア数も順調に増加する中、どうして新卒採用を始めたのかというところから、求める人物像やジャッジの軸、育成のサポート体制まで詳しく紹介されていました。組織戦略部という組織があったり、CTO経験者が多数在籍しておりアドバイスが貰いやすい環境など、サポート体制が非常に手厚い印象でした。これから新卒採用を始める方だけではなく、採用や育成をより良くしたいと考えている方におすすめです!

組織戦略部については↓の記事がおすすめとのこと👀

プログラミング未経験の学生をエンジニアにしてきたノウハウを公開

FiNCの篠塚さんより、プログラミング未経験の学生を育成する研修の設計やOJTの進め方についてのお話でした。フェーズごとに数ヶ月実施の研修がいくつかあり、今回は最初のプログラミング未経験からの研修について紹介されていました。こちらも研修の内容だけではなく、サポートについて力を入れていて、メンター向けのガイドラインもあるとのことでした。また、未経験でも事前にプログラミングに興味があるかを測るために、論理パズルのような問題を出して判断しているところが興味深かったです。ガイドラインも論理パズルも内容がめちゃくちゃ気になりますね!

「新卒だけ」じゃない!学び直しを支えるミクシィの技術研修を紹介

こちらが私の発表になります。

せっかくなので詳しく説明していきます。

はじめに私の自己紹介ですが、名前はきたこうじと申します。

2012年にエンジニア職としてミクシィに新卒入社し、いくつかのサービス開発を経た後、2018年頃からDevRel(Developer Relations)として技術広報や社内コミュニケーションを担当しております。

そして、新卒技術研修ではプロジェクトマネージャーというかなんでも屋さんとしていろいろな調整をしています。

会社紹介

こちらはミクシィのこれまでのサービスのリリース年表になります。創業以来20年以上の長きに渡って多くのサービスをリリースしています。

中でもSNSミクシィやモンスターストライクが有名ですが、人によってはこのサービスってミクシィだったのか、というような発見もあるのではと思います。

このようにいろいろなサービスを作っているミクシィですが、会社の軸としてはみんなでわいわいマルチプレイを楽しむモンスターストライクのように、コミュニケーションサービスを中心にしています。

また、最近ではスポーツ事業にも力を入れています。

多くのサービスがあると紹介しましたが、そのサービス毎に開発チームがあり、技術選定もそのチーム単位で行っています。そのため、利用する技術は多種多様です。

事業のフェーズも長年運営しているものから新規事業まで、様々あります。チームによってエンジニアの人数も異なるため、部署によってはフロントエンドだけ担当するエンジニアがいたり、フルスタックでいろんな領域を担当するエンジニアがいたりと、エンジニアの守備範囲も様々です。

一部ではSREなどの複数のサービスを担当する横断組織もあります。

ミクシィの新卒技術研修

前提として、ミクシィの新卒について紹介します。ミクシィは新卒と言っても開発経験が豊富な方が多く、人によってはインターンシップなどで数ヶ月の実務経験がある方もいます。

技術的には強みのある何かしらの分野を持ちつつも、柔軟性があることが特徴です。ここで言う柔軟性は、特定の技術のみに興味があるのではなく、必要に応じて未経験の分野でも学習し、前向きに取り組む姿勢を指します。

ミクシィでは新卒研修で伝えるべき知識には2種類あると考えていて、1つは即戦力として現場に入ったときにスムーズに業務に入れるようにするための知識です。こちらは現場ですぐ必要になる知識と捉えることができます。もう1つは、長期的な目線で考えたときに、知っておくと役に立つものです。こちらは技術的な教養として捉えており、例え完璧にマスターできなくても、概要を把握しているだけでもいつか学ぶときのとっかかりになると考えています。

ミクシィでは1つ目の即戦力になるために必要な知識をしっかり学んだ上で、さらに2つ目の技術的な教養をどれだけ獲得できるかに重きを置いています。

外部講師に依頼しクラウドを学ぶ以外は、内製で研修を行っています。基本的には1日1科目でリモート実施していて、Flutter研修とチーム開発研修は今年初の取り組みになります。この通り、クライアントアプリ開発からセキュリティまで、幅広い技術を学んでいます。

配属先によって利用する技術や担当領域の広さが異なるので、特定の配属先を意識した研修は行っていません。また、長い目で考えると、今得意な技術があっても、今後何十年もその技術だけで食べていくことは難しいので、研修を通して新しい技術を学ぶきっかけ作りや、その姿勢作りになればと考えています。

社内では相互理解という言葉がよく使われるのですが、サーバーとクライアントなど、一緒に開発する他のチームの技術を知ることで、繋ぎこんだときの手戻りが減り互いに円滑な開発ができると考えています。

多くの研修でハンズオンがあり、講義を一方的に聞くだけではなく、実際に手を動かして知識を定着させることを目指しています。また、研修によってはペアプロを行ったり、チームに分かれて実施することで、新卒同士で刺激し合ったり助け合ったりして高め合います。そして、時代的にオフラインの交流が減っているので、同期の繋がり作りにもなっています。

右下の円グラフに講師の新卒入社年度を記載していますが、3年以内の新卒が半分、4年目も入れると6割以上が若手講師になります。どうして若手に任せるかと言うと、持続可能な研修を目指しているからです。一人の人が長年に渡って研修を担当すると属人性が高まってしまいます。また、とある研修を立ち上げた方の手を開けておくと、いつの間にか違う分野でもエキスパートになり、新しい研修を作ることもありました。

他にも、受講した新卒が次の年に講師やチューターとして研修の運営に参加することで、受講した経験を次の年の研修に活かして改善することができます。最後に、講師として人に教えることは成長に繋がりますし、受講する新卒も、来年再来年には自分も教える側になることを意識することでより研修に身が入ります。

技術研修の社内外への公開

新卒だけに研修の機会を提供するのはもったいないとの考えから、昨年からほぼ全ての研修を社内にライブ配信し、アーカイブ動画も残して社内のメンバーであればいつでも誰でも受講可能にしています。もちろん、エンジニア以外の方も動画を見ることができます。希望があればハンズオン環境もできるだけ用意しています。動画を残すことで、新卒の方も万が一当日欠席しても動画を見ながら後追いが可能です。

今年から希望の研修を完全に新卒と同じ状態で受講するコースも開設しました。こちらは実際に業務でこれから未経験の技術に挑戦する方が受講しています。

新卒の方の立場から見ても、自分が受講した年より後に増えたり進化した研修を受講する機会があることになります。このように、ミクシィでは新卒の枠を超えて、学び直しを支援しています。

エンジニアの方だと、しばらく離れていた技術の最新知識を得る機会になったり、経験のない分野へ入門する機会になったとの声がありました。非エンジニアの方でも、エンジニアが日頃使っている用語の雰囲気を学べたり、独学で書いていたクエリを体系的に学べたりしています。また、動画だと自分のペースで見れる点が好評でした。

昨年の公開実績はこのようになっています。多くの研修で動画やスライドを公開することができました。今年も随時公開を進めていますが、昨年より多くの研修を公開できる見込みです。

社外への公開は非常に好評で、業界全体の技術力の向上に少しでもお役に立てていると嬉しいです。

技術研修の工夫

研修を実施する講師側の工夫をあげてみました。ここに上げている工夫は全ての研修で行っているというより、こういう工夫をしている研修もあると思ってください。1つ目はローカルのPC環境への依存を減らして、環境構築のトラブルを減らしています。最近だとM1のCPUかどうかも影響したりしますね。環境構築のトラブルの対策として、事前にクラウド上に環境構築しておいたり、ブラウザ上でコードを実行できるGoogle Colaboratoryを利用したりしています。もちろんローカルで環境構築が必要な場合もあるので、その際には環境が整っているか判定するチェックスクリプトを用意したりしています。

進行の工夫としては、課題を解いたら自動でSlackに通知するシステムを作っていたりします。

また、クライアントやサーバーサイドなど、研修毎に言語が変わって大変なので、文法がまとまっているサイトを紹介したり、文法などをまとめたチートシートを作成したりしています。

ハンズオン環境に関しては、各自宅からのリモート参加できるようにしつつ、セキュリティを確保しています。具体的には、IP制限ではなくアカウント認証を導入しています。これにより、昨年からはVPNの利用も一切ありません。

そもそもですが、内製研修を作る工数を確保するには、新卒がすぐに現場で活躍していて工数をかけて育てる価値が理解できている状態になっている必要があると思います。そのために研修するので、どちらが先かは難しいのですが、大事なことは地道に毎年こつこつ研修をパワーアップさせていくことだと考えています。

そして、研修の運営ではフィードバックを非常に大切にしています。フィードバックにもいろいろあり、1つは既に述べたように、去年受講した新卒にチューターとして補助に入ってもらうことで、受講した経験をフィードバックして改善に繋げてもらっています。また、受講者のアンケート結果をリアルタイムに共有したり、社内外での公開の反響も共有を心がけています。もちろん、上長にも伝えることで研修の意義を伝えています。また、フィードバックの中でも言葉で感謝を伝えることが大事で、私からはもちろんですが、CTOからも伝えてもらっています。

研修のPDCAを回そうと思っても年1回だとスパンが長く、1年前のことを忘れてしまいがちです。そこで、研修と同じテーマで新卒採用の一環として技術イベントを開催しています。これにより、PDCAを回せる回数を増やすとともに、イベントをきっかけにミクシィに興味を持ち、入社後に運営側としてイベントや研修に携わるという流れができています。イベントの実施は大変なことも多いですが、採用・育成に効果があるのでおすすめです。

まとめとPR

以上でミクシィの研修についてご紹介しました。まとめとして、ミクシィでは新卒の枠を超えて長期的な目線で研修を実施しています。毎年フィードバックを大切にしながらコツコツ改善を重ねて行くことで、よりよい研修を作っています。そして、研修を社内外に公開することで、ミクシィの新卒以外に対しても学び直しの支援を行っています。

ミクシィでは積極採用中です!入社すると社内限定の研修動画も見れます!

YouTubeでは研修動画や勉強会の動画などを公開しているので、是非チャンネル登録ください。Twitterでは研修資料の公開など、最新情報をつぶやいているのでこちらもフォローください。エンジニアブログオウンドメディアにも記事がたくさんあるので、是非ご覧ください。

Q&A

発表後、大変ありがたいことにいくつか質問をいただきました。

ペアプロはどのように設計していますか?

運営側としてはペアプロやチームで課題に取り込むことを推奨しています。ペアプロに関してはドライバーとナビゲーターに分かれるなど、最低限のことを伝えて実施しています。また、ペアプロやチームの組み合わせに関しては研修毎に変わるようになっていて、いろいろな人と一緒に取り組めるようになっています。

運営コアメンバーって何人ぐらいでやられていますか?

運営自体は私+CTO+人事で回しています。講師側は研修科目×2,3人なので、現場の負担が大きいですが、配属後の新卒の方々が現場で大いに活躍しているので前向きに協力して頂いています。

Git研修のスライドが450枚ほどあって驚きました

凄いですよね!Gitの内部動作をアニメーションのように1枚づつ表しているので枚数が増えているのと、技術イベントと連携しているので長年の秘伝のタレの結果なのですが、それでもこの枚数を毎年メンテナンスしているのはありがたいです。

内製するか外部にお願いするかの見極めはどうしていますか?

内製か外部かは受講者にとって学びになる方を選択しています。クラウドの研修は、良い研修プログラムを提供している会社がある、テスト環境を使うことができる、内製すると毎年コンソール画面等の変化に追従するのが大変、などの理由で外部にお願いしています。過去には外部の方に講演いただく研修もありました。

おわりに

企画・運営いただいたミダスキャピタル様、今回は貴重な登壇の機会をいただきありがとうございました!研修資料や動画の公開は今年も絶賛進行中なので、最新情報をキャッチしたい方は是非Twitterをフォローください。

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ディベロッパーリレーションズチームhttps://twitter.com/kojikita