プロジェクト・マネジメントと聞いて蕁麻疹がでそうになるあなたへ 〜 ありがちな誤解 〜
※本記事は mixi Advent Calendar 2021 10日目 の記事です。

まえおき
その昔、WEB系企業でエンジニアとして働いていた私は、プロジェクト・マネジメントといえば、ガントチャートを眺めながら、メンバーに指示をする、軍隊の指揮官のようなイメージを持っていました。
2005年頃、「プロジェクト・マネジメント」という言葉を知り、まわりに経験者もいなかったため、PMP(Project Management Profesional)の教本などを読み漁っていましたが、プロジェクト・マネジメントには興味を持ちつつも、それらの教本は退屈で違和感のようなものを感じていました。
というのも、当時、”もどき” かもしれないですが、実務で体験していたPMは、色々な人と話し、一緒に問題を解決していく、といった、もっと刺激的でおもしろいものだったからです。
程なくして、アメリカのシリコンバレー近くの大学に、留学生向けの公開講座で Project Management のプログラムがあるのを見つけた私は、ゼロからの英語学習を経て、当時勤めていた会社を退職し、1年間の留学を決めたのです。

そこでは、アカデミックというより、実践で学ぶようなプログラムだったので、授業の大半は、ディスカッションやワークショップ、企業訪問などでした。世界各国から集まるクラスメイトと一緒に、実体験を元に、ディスカッションしたり、課題をこなす日々は、プロジェクト・マネジメントに対するイメージをポジティブなものに変えてくれました。
あれから10年以上経った今、PMBOK 7th Edition が大幅に変わったというので、今年の夏から、社内に声をかけて輪読会を開催しています。参加者の体験談を交えながらディスカッションし、docbaseでもそのメモを公開したりしているのですが、まだまだプロジェクト・マネジメントに対する誤解が存在しているような気がしています。
そこで、PMBOK輪読会で話題にあがったことなどと共に、私が感じた世の中のプロジェクト・マネジメントに対する誤解と、プロジェクト・マネジメントのおもしろいと思う点についてご紹介できればと思います。
特に「自分には関係ないし」と思っている方や「マネージャー?そんな身分じゃないから」と思っている方に、読んでいただけますと幸いです。
プロジェクト・マネジメントへの大きな誤解
過去の私がそうだったように、プロジェクト・マネジメントと聞いて、蕁麻疹がでそうになる人の多くは、「プロジェクト」や「マネジメント」という管理職やシステマティックなイメージのある言葉から大きな誤解をしているように思っています。
●プロジェクトとはひとりぼっちでもプロジェクト
プロジェクト・マネージャーの職務経歴書には、「◯◯プロジェクト(100名規模)」などのようにプロジェクトの規模を記載することがあります。その規模が大きいほど、PMとしてのステータスのように扱われることもあります。
PMBOK には「Project とは、ユニーク(唯一無二)な製品、サービス、または結果を生み出すために行われる一時的(期間の決まった)な試みのこと。」と書かれています。
つまり、何かしらの成果(物)を目指し、一定期間に行う活動は、その組織の人数や成果物の種類に関わらず、プロジェクトと定義されるとされています。極端な例ですが「家族のために今年のクリスマスケーキを手作りする🎄」も成果物があり期限のあるプロジェクトなのです。
●プロジェクト・マネジメント=ガントチャートではない
プロジェクト・マネージャーといえば、ガントチャートを組み立て、スケジュールと人的資源(リソース)の管理をする人だと思われがちです。
私が読んだ限りでは、今回のPMBOKの中にはガントチャートの使い方や進捗の管理方法などについて詳細に説明する個所はありませんでした。
それよりも、協力的なチーム環境を構築する話やコミュニケーション、テーラリング、パフォーマンス・ドメイン間での連携など、価値を生みだすための人やチームのアクティビティにフォーカスされているようでした。
●プロジェクト・マネージャーは偉くない
PMBOK の中では「プロジェクトマネージャーは、目標達成するためにプロジェクトチームの作業を促進し、狙い通りの成果を実現するためのプロセスを管理するなどを行う、実行組織から選任された人物」と述べられています。あくまでもプロジェクトチームをとりまとめて、チームの力を最大限に引き出し、チームと一緒に目標に向かって突き進む人物なのです。
アメリカでのプログラムでは、よく軍隊の動画を教材として見せられていたが、最新のPMBOKでは、軍隊の指揮官のような立場ではないようです。
●プロジェクト・マネジメントにテンプレートは存在しない
世の中にはプロジェクト管理に関する便利なツールが溢れています。
PMBOK の 3.7 TAILOR BASED ON CONTEXT では「すべてのプロジェクトはユニーク(唯一無二)である」と述べています。また「各プロジェクトのそのユニークな状況に適応していくことを基本とする」といったことも述べられています。
「プロジェクトはユニークである」というのは、以前からPMBOKの中で言われていることです。つまり、ツールは色々ありますが、何を選ぶか、どう使用するか、それぞれプロジェクトにあわせて、Optimize(適応)させることが必要とされるのです。
プロジェクト・マネジメントは何がおもしろいのか?
ここまで、プロジェクト・マネジメントに関するありがちな誤解を紹介してきました。最後に、私がなぜ、こんなにもプロジェクト・マネジメントを熱く語るのか。その魅力を共有しようと思います😋
プロジェクト・マネジメントの面白味 その① 視野が広くなる。
プロジェクト全体を俯瞰してみれる(みなければならない)ので、必然的にプロジェクトに関わる様々な職種や業種の人と話したり、これまで知らなかった世界を見ることができます。つまり、ソフトウェア・エンジニアだとしたら、設計やプログラミングのことだけではなく、ビジネスや法律、社会についても視界に入ってくるので、社会の課題をテクノロジーで解決する、といったアイデアにつながったり、キャリアを広げやすくもなります。
プロジェクト・マネジメントの面白味 その② 経験値は市場価値も上げる。
プロジェクト・マネジメント業務に関わると、全体を俯瞰してみるのと同時に、様々な経験ができます。折衝などのコミュニケーション、プロジェクトに応じたオプティマイズ、リスクへの対応など、メンバーとして特定の担当領域だけを実行するよりも、PMとして活動するとプロフェッショナルとしての幅広い経験値を得ることができます。
例えば、次のプロジェクトで、一エンジニアという立場になったとしても、様々なプロジェクトや領域での経験があると、相手やまわりの状況を理解しやすく、かつ、過去の経験から対応方法を応用することもできるので、柔軟でスピーディな業務推進が可能となります。
似たような経験値を得られるものとして、組織のマネジメント職がありますが、限られたポジションですし、機会もそうそうあるものでもありません。それに対し、プロジェクト・マネジメントは比較的ハードルが低いので、今のキャリアにプラスαを考えているなら、挑戦してみることをお勧めします。
プロジェクト・マネジメントの面白味 その③ 困難が多い分、達成感も⤴
ジグソーパズルを思い出してください。数ピース程度のパズルと千ピースのパズル、完成したとき、どちらが達成感を感じられるでしょう?圧倒的に千ピースではないでしょうか。
私はプロジェクト・マネジメントはゲームみたいなものと思っています。プロジェクトの成功は、困難や障壁、複雑性が増すほど、そのプロジェクトチームの手腕にかかってきます。複雑なパズルを完成させたときのようなプロジェクトは達成感も大きくなるのではないかと思います。
プロジェクト・マネジメントの面白味 その④ 結果の満足度に影響する。
面白味というより、メリットかもしれませんが、より質の高いプロジェクト・マネジメントが実現できると、各タスクの巻き戻しやトラブルを防ぎ、かつ、最終的な成果物もより良いものができるので、プロジェクト完了時のステークホルダー全員の満足度が爆上がりします。もし、各自が思うがままに動く無法地帯のようなプロジェクトだった場合、メンバーの不平不満につながったり、チームの目標もブレかねないので、プロジェクト終了後のしらけたムードは避けられません。きちんとプロジェクト・マネジメントを行うことで、サービスの利用者も作る側も、皆が幸せな世界が得られるのです。
おわりに
最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。
プロダクト・マネジメントやアジャイル開発などについては書籍や記事があるのに、プロジェクト・マネジメントについては、その言葉のイメージからなのか、なかなか見かけなくなっていました。PMBOK 7th Edition の登場によって、少しだけ注目してもらえるようになったのかなと思いますが、どんな職種やキャリアステージでも、知識やスキルとしても持っていても損はないものだと思っています。少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
※ミクシィ社内輪読会ではまだ未発売だったため英語版で実施していますが、日本語版もでているようです!朗報!
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